「一年の計は元旦にあり」と云います。みなさんそれぞれに乙酉(きのと・とり)年のお正月に期する所があることと思います。
さて、平成17年(2005年)、私の思いは「百年の計は2005年にあり」です。
ここで単純に100年昔を年表で見れば、日本にとっては何よりも日露戦争。その中においても、後々のわが国を方向付けることとなった日本海海戦の年でした。これは、当時最強にして無敵のロシア・バルチック艦隊を、東郷平八郎元帥が壊滅させた海戦です。
東郷連合艦隊司令長官はその日、旗艦三笠(横須賀港に保管されています)にZ旗を掲げ、「天気晴朗ナレド、波高シ」「皇国ノ荒廃ハ此ノ一戦ニアリ」など今に伝わる言葉を残しました。
この乾坤一擲の大勝利は、欧米列強に虐げられる世界の人々に大きな勇気を与え、極東に日本国ありを印象付けたわけですが、その反面、私たちの国は、アジアの国々と和して生きる国家ではなく、覇権国家への道を歩むことになったと云えます。
そして、2005年に目を転じてみましょう。
日本海海戦が、世界史的できごとだったことに較べれば、すこぶる国内的ですが、昨年、地方への「三位一体の改革」に対する諮問がありました。それは、幕末の老中阿部正弘が、「黒船」について地方(各藩)に意見を求めて以来百数十年ぶりとなるものでした。
三位一体の改革は、内容的には大変地方にとって苦しく、不利なものであるとはいえ、私たち地方六団体にとって、よもやまさかの半信半疑だった財源権限の委譲が、本格的に始まった(つまり2005年、我々は地方主権への道を現実に歩みだした)のです。
また市町村の大合併も、事実上この2005年3月31日で大勢が決まります。
さらに、私たち青森県を見てみます。
いよいよ2005年、自主自立をめざすべく財政の収支均衡(収入を上回る支出を続けてきた赤字体質による財政再建団体転落の危機を、県民と力を合わせて脱却する初めての難関)に向かって、『財政改革プラン』が本格始動します。
さらに、昨年末に決定した、『行政改革大綱』(公業務とは何か、県のなすべき仕事とは何かに踏み込んで精査し、出先を含め県庁全体のスリム化等の徹底によって、小さな県庁をめざす。つまり、より民間にコストが向けることができるあり方を作り出す)が実施されます。
2005年、平時における青森県130年の歴史上初めての大改革が始まります。今、私たちは県政史上最大の難局にあり、そこにさらに黒船ともいうべき三位一体の改革が襲来している状況と認識して下さい。
ともあれ私は、やり繰りして掻き集めた新2005年度の政策的経費、通称「わくわく10(テン)」のうち6本を足元強化のため、産業・雇用対策に集中しました。もちろん、人づくりや安全・安心や健康などのプログラムも組んでいます。
しかして、百年の計は2005年にあり。
この国の姿・形や仕組みが大きく、地方主権の時代へと変容しようという時、100年を見渡すならば、私たちは何を念頭に置くべきでしょうか。
そこで「環境、百年」。そして「人、百年」。
「環境」。
すなわち、私たちの暮らしのフィールドの健全さをどう守ってゆくか、また、さらに良いものにしてゆくか。かつそれによって与えられる水資源や食料生産基盤、生活の安全・安心。つまりは、この地球(の青森)に生きる生物としての我々の100年のために、今後なすべきは何かを共に考えなければなりません。
とりあえずは前述の、わくわく10の中にも、「美しいふるさとの水資源推進プロジェクト」などといった、水循環システムの再構築をスタートさせることとしています。
そして、「人」(あるいは「人財」と云うべきでしょうか)。
思えばあの激動の明治の大改革を支えたのは、各地域における藩校の存在と、そこから輩出された多様な、(固定観念に)捕らわれざる人材であったと思います。
さらに加えて明治以降の日本を支えたものは、「村に不学の戸なく」(明治5年の学制発布)における読み書き(識字能力)算盤(計算能力)であったと考えます。
人(財)、百年。
2005年から百年の人づくりの大計を思料する時、私は今こそシンプルに初等教育における”読み書き算盤”(基礎学力)をどう問うか、そして、ニート増加社会の中、物事や人生にチャレンジする意欲が、いかにしたら子供たちに生まれてくるのかを皆さんと共に考えたいと思います。
この分野も、わくわく10の中で、まずは「自立する人づくり推進プロジェクト」を教育委員会・知事部局連動して実施する予定です。
また、人づくりにおいては、根本的に何をすべきかについて、建前でない、本音本質の議論を皆様と行うことがかなえば幸いに思っています。
「環境、百年。人(財)百年。」それが2005年、私の一年の計であり、百年の大計の始まりです。皆さん、大いに論じませんか。
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