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VOL.53 [2008.3.3]
私を川部へ連れてって 1
 津軽にはしょっちゅうお邪魔しているが、いつもは車なので久しぶりに奥羽線に乗ることになった。

 随分昔に寝台特急に乗った事もある。あれは確か、10年ほど前の3月末だった。桜の奈良は、25℃もあった。京都でお弁当とお菓子と飲み物をいっぱい買い込み、トランプを用意して、3人の子供たちと夜行寝台特急日本海に乗った。
 酒田か鳥海山のあたりで夜が明けたかな。雪が残っていて、秋田を過ぎて大館・弘前と北上するほどに豪雪となり、吹雪の中を昼前に青森に着いた。♪青森駅は雪の中〜と唄そのものだった。

 実は奥羽線各駅停車は、初めてだ。ドキドキ。
 ドアは自動だろうか。ボタンを押して開けるのかな。(案外詳しいのは、東北線には時折、車より早く便利な時に乗っているから)
 慣れぬ事に本当はドギマギしながら、川部に行くYさんに小学生並みに引率されて、“初めてのおつかい”ならぬ、初めての奥羽線ローカル列車の旅だ。
 しかして、2010年度に新幹線が新青森まで本格開業すると、この線は二次交通の大スターになる。

 さて、ちょこっと仕事をしていたので、16時の約束に少し遅れて、青森駅の待ち合わせの発券機の前に辿り着いた。
 「まだ10分もありますから、慌てなくて大丈夫ですよ」と云われながら、Yさんの指導通り570円の切符を買って自動改札を抜け、気が急いて2番ホームへ行きかけたところを注意され、4番ホームへ“ワシは舞い降りた”
 お、居た居た居た。
 お、みんなまじめに詰めて座っている、青森人はいい。
 お、やっぱしボタンを押して乗るタイプだ。
 お、くんくんくん、別にスルメ&酒くさくないぞ。(かつて新聞の投書で、弘前行の車内でスルメを齧って、ワンカップを呑んで匂う云々自粛せよとあったので嗅いでみた。)まだ早いのかな。
 お、車内はぬっくいね。川部が吹雪いて、八甲田山になってるといけないので、ダウンをしっかり着て来たのだけど、暑いくらいだ。
 (オーバーコートだけのYさんに「川部が、♪ひゅ〜るり〜 ひゅ〜るりら〜ら〜だったらどうするんだ」と発券機前で問いたら、「百石程は寒くないと思いますけど」と目一杯云い返された)
 もともと走って来て汗もかいていたから、ダウンもセーターも脱いで膝の上に置いて並んで腰かけた。
 横掛けの席だ。お尻がとってもぬっくぬっく気持ちいい。取材するんでなければ、こりゃ寝ちゃうね。
 青森駅の権威のYさんが、話しかけてきた。
 「8時57分の恐怖を知っていますか?」
 「何だそりゃ」
 「同時刻に白鳥号が並んで停まってるんですよ。片や函館行、片や八戸行なんですが、慌てて駆け込むと自分の見た方が自分の乗る白鳥号だって思いこんでしまって、これまで新幹線八戸乗り継ぎを目指す何人もが飛び乗って“蟹田”戻りの刑にあってるんですよ。怖いんですよ」

 ---発車まで3分ほど(この単位は重要であると後ほど知ることになります)お待ち願います。この列車は秋田行きです。

 「20時3分に着くんですよ。4時間あったら仁川(インチョン)どころかソウルのホテルに着いちゃいますよ。昔、子供の頃、秋田に親戚がいて、鈍行で秋田まで行ったんですよ。子供だったから、とっても楽しかったんですけど、今だと無理ですよね。」
 “秋田かあ。45年ぐらい昔、自分も鈍行でじいさん・ばあさんと行ったなあ。駅売店でトランプを買ってもらったなあ。なぜかスペードの3が入ってなかったので、予備のジョーカーにボールペンでスッペ3と書いたなあ。”と変な記憶を突然思い出した。
 “秋田―子供時代―トランプースペード3”とは、なんという記憶か。
お。お。

 ---チャラララ・ランラン(何とも表現しにくい)

電子音をすごく嬉しそうにチャイムして、16:13普通列車662M秋田行きは出発した。

 2へ続く。乞うご期待)
三村 申吾

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