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VOL.54 [2008.3.5]
私を川部へ連れてって 2
 次の駅は「新青森」だ。とても大切な駅だ。
 なぜなら、2年すると「新青森」に新幹線がやって来る。
 リレー列車云々とJR東日本にアピールしているわけだから、本日の体験も何かと大切な勉強になると思っている。
 さて、2両編成の我が662Mは、座席9分の混み。この夕方の時間帯はご婦人方が8割を占めている。お買物のお客様が多い。

  ――(いろいろ停車時間等、丁寧にアナウンス。)

 本日は、○田車掌さんが秋田まで行くらしい。
 お客さん同士の会話はあんまりない。自分は乗り慣れた風にしてすましてメモを取っている。実はドキドキ。
 空は晴れ渡っていて、夕暮れでもまだ青い空。白い雪がお天道様にキラキラしている。
 「新青森」到着
 もう新幹線の高架が奥羽線と直角に交差しているし、相当に工事は進んでいる。
 ありゃ、2人しか降りない。誰も乗らない。しかし、2年経ったらすごいだろうな。周りの光景もがらりと変わるだろうな。
 そんな事を思ってメモしてる間に走り出して、すぐに 
 「津軽新城」到着
 暮らしやすそうな街、通勤にも良さそうな街。
 選挙の街頭でも何度かお世話になったなあと思い出しては感謝。 
 出発。ありゃ、雪が増えてきた。
 662Mスピードアップ、アップ、アップ。
 雪もUP、UP、UP。
 晴れてるのに♪ひゅるり〜、ひゅるりらら〜の旅情が一気に押し寄せて来て、すごくムード満点、
 と、なんだ、おりゃ、“たらポッキ温泉”とある。
 「ねぇ」と声を出す間に
 「鶴ヶ坂」到着
 「“たらポッキ”って温泉あったけど、知ってる?」
 「お湯がつるつるなんですよ。ぬるっとしてて、とても肌に良さそうなんですよ。この間入ったばかりです。」
 ん――。沿線のプロは、温泉のプロでもあったのか。
 例の『ピカイチデータ』でも本県人の温泉好きは有名だが、さすがYさんも長年、世を経てきたジモティ、恐れ入りました。なるほど美肌であるわけだ。
 腰に効く“きき湯”と疲れをとる“バブ”、入浴剤でごまかしている小生では及びもつかない。
 しかして、なんで“たらポッキ”なのだ。語源は何ぞや、国文学士の小生はまず湯質よりもこの名前にくらくらしている。
 「タ・ラポッキなら、イタリア語みたいだけど、たらのポッキーだったりして。魚のたらと関係あるのかな」
 とYさんに問いた。
 「さあ、どうなんでしょうかぁ、ン、これはまさにわかりません。トド湯の弟さんに聞いてみるのはどうでしょうか」
 (青森市内青柳にあるトド湯のオーナーの弟さんは我が社の幹部であります。不思議を、なんとなく成る程と思わせる応答をするところがYさんの優れたるところであります。しかしトド湯もかなり秀逸な!?ネーミングでありますが。トド湯の一帯は、向かいの「鈴木の焼きそば」ともども暮らしてみたくなる街のたたずまいです。自分も好きなので、焼きそばを買っていると、よく向かいのトド湯からお客さんが流れて来て、出来たてを美味しそうに食べては、鈴木さんと会話していくんですね。実にいい。)
 「そうしよう、来週聞いてみよう」
 列車は、「鶴ヶ坂」をいつとは知れず出ていた。
 雪国の風情が否応なく、屋根の上の1mいや2m近い雪と共に更に更に押し寄せてくる。いや、迫力で迫ってくる。
 「旅」をしている人ならば、もう旅情にメロメロだろう。けれど我々はこの風土の中で、それぞれに暮らしている。
 そんな日々の生活の中をこの奥羽線は走ってゆく。

  ――「少々」停車しまーす。と○田さん。

 「あのう、いつも考えているのですが、“少々”ってどのくらいなんでしょうねぇ」
 「そりゃ、大佐の上で中将の下で、オショーネシーのようなもんだろう」(訳のわからんことを我ながら云ったと少し反省して、ポカーンとするYさんに何か云わねばと思う刹那)
 「それ誰ですか、お友達ですか」
 「気のいいダチのようなものだけれど、随分会ってないな。時折苦情は云ってやってるんだけど・・・。5分ぐらい迄なら少々かな。」
 ガタン。走り出した。ぐいぐい加速する。電車はダッシュがすごい。
 ト、トンネルに急に入った。
 「耳が、耳が、そんな山だ、かなあ」と小声で叫んだら、
 「車掌さんが○田さんですよ」とYさん。
 “そうかな”と妙に納得させられるんです、これが。
 結構長いトンネルで耳が5回くらい圧迫というかツーンツーンとした。
 「(Yさんが時計見ながら)チチチ90秒、チチチ120秒ですね」
 それなりに長いトンネルを抜けるともっと雪国だった。
 「大釈迦」到着

  ――大釈迦です。2分少々停車で、39分の発車となります。

 2分間は確かに極めて少々だなとふと思った。

 3へ続く、さらにご期待)
三村 申吾

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