12:48。
青森駅2番バス停より、「免許センター行」出発。
バスの中は暖かい。ひと息つく。
オ“ぬっくいねぇー。外は寒かったよねぇ。”
Y“えー、カイロ貼って来なかったんですか?やっぱり必需品ですよね。私は背中と腰と2枚貼って、ばっちりですよ。”
オ“オジさん年代は、気力だ!”
(なんて事はなくて、実は先日のチャリツアーみたいに外が暖かそうに見えたので、ジャケットだけで来た。)
バスは駅前広場をぐるりと回って、青森グランドホテル前へ。
オ“あれ、バス空いてるね。日曜の昼だからかな。美術館へ行きそうなのは、前のカップルだけかな。”
Y“お出かけする人は、だいたい午前中ですよ。”
オ“おや、古川経由って表示してたけど、まっすぐ走ってる。”
さくら野を過ぎて、右折だ。お、ウィズ・アベニュー通過だ。
(「そう云えば、前の秘書のMさんが、ここで挙式したなぁ」と、ふと思い出していた)
Y“県庁の横を通るんですね。不思議なルートですね。随分大回りですね。急がない時は得した気分ですが、平日だとここまでくるのが大変ですよね。”
古川のバス停@を通過した。
あれ?我々のバスに歩道から手を振るおばさんがいた。つい癖でこちらも手を振ってしまった。
Y“あの、何で手を振ってるんですか。知り合いですか?”
オ“いやぁ、つい選挙カーの気分で、条件反射的に手が動いちゃったよ。あハハハ。”
古川バス停Bで停車。アナウンスは、K内さんだ。
「本日は市営バスをご利用いただき、ありがとうございます。当バスの古川発車時刻は12時56分となっております。少々停車いたします。」
Y“少々だから、3分ですかね。さっきから、とってもこまめにアナウンスして下さって、運転も丁寧でいいドライバーさんですよね。”
オ“生真面目な仕事ぶりが嬉しいよね。観光のお客さんが乗ったら、青森はいいって感激だよね。”
ブルルン。エンジン再始動。
出発、左折。
Y“この道は、私の通勤路です。バスから見ると結構素敵な道ですね。いつも急いでるから、新しい発見です。”
K内さんアナウンス。
「このバスは、県立美術館前経由、免許センター行きです。慈恵会病院前は経由いたしません。」
Y“あれぇ。鶴亀温泉は通らないようです。私の一番好きな温泉なんですよ。せっかく前を通ったら教えようと思ったのに!”
オ“津軽弁で「鶴亀」って縁起いいってことだっけ?”
Y“そうですよ。鶴亀温泉は、釜風呂があって、すごくいいんですよ。釜風呂はサウナほど熱くないんです。釜の中で、ごろって横になっていると、ちょうど気分よく暖まって、うとうと眠れてポカポカするし、ここの釜風呂が一番好きなんです。今度入ってみませんか。お休みの午後の最高の幸せは、鶴亀温泉!”
(鶴亀の社長さん、あなたのお陰で幸せな乙女がここに居ます。県民のポカポカな幸せづくりにご協力くださり、感謝いたします。)
鶴亀話のうちに、バスは東北線の踏切を渡った。しかして、次の踏切で遮断機が下りた。路線をドシンドシンドシンと揺らし、軋ませながらJR貨物が通ってゆく。
Y“あのう、朝の通勤は秒単位の闘いです。けど、運が悪いとここの踏切二つともひっかかるんですよ。そんな日は塩撒いてから職場に入るんですよ。”
オ“えー、役所の前で塩撒くのか?”
Y“指で摘んで塩撒いて清めてる気分で玄関を入ります。やはり、そういった負の気分は断ち切らないといけないんです。一日の仕事の計は、朝の気分にありです。”
(んー、茫洋としているようでいて、いいスピリッツだ。Yさんて、ホントに面白いね)と思ったけれど、口には出さなかった。
(今、横目で原稿を見ている家人から、クレーム)
家“いつになったら、美術館に着くの?”
オ“明後日かな。”
と答えたならば
家“明後日来いってケンカ売ってるの?”
オ“いや、ホントに明後日でないと書けないからってことだよ。”
家“ちょっと、あなたホントウに前置きが長いわよ。寺山展終わっちゃうわよ。”
オ“だって、趣味の路線バスツアーも取材したんだから、書いてるんだけど。”
いや、真の原因は、我々の行く手が長い長い重い重い貨物列車に阻まれたために、バスが止まっていることによって筆も止まっているのである。
これは仕方がない。
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