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VOL.83 [2008.7.22]
私を浅虫水族館に連れてって2
 4番バス停は、大変に混んでいる。
 かつては、JRバスでも浅虫行を運行していたのだけれど、4月1日に路線廃止となったので混むのだということを、バスセンターのおじさんが教えてくれた。
 当路線のベテラン元ギャルがいっぱい並んでいて、私たち素人に
 「立つバスだば、まいねっきゃ」と話しかけてくれたけれども、何とか後部タイヤの盛り上がっている席に座れた。
 九割方がベテラン元ギャルで、ほとんど皆、帽子を被っている。

“ね、ね、なんでみんな帽子なのかな?”
Y “やっぱりー、津軽ギャルは色白だから、太陽に弱いんでしょうか。母は帽子だけでなく、白い覆面までしていますが、黒いシャドーすれば、田園のパンダです。”
“そりゃ、畑に出るスタイルだからでしょ。お母さん、すんごく色白で美人だよね。”
Y “父が惚れまくったようです。”

 バスはすでに紅屋の前。JRバス廃止のせいか、土・日なのか、席はすっかり埋まっていて、ついに「立ち」の客が出る。

Y “ところで、思い出しました。うちの母は、畑はともかく、髪をセットしていない日には、帽子を被るんですよ。私はちょっと社会学の授業も取ってたんですが、夏休み研究に「津軽平野における女性の帽子に関する一考察」などぴったりですね。”
“うちの女子大生(娘)に云ってみるわ。”
Y “男の人で頭の薄くなってきた方はほぼ間違いなく被ってますよね。どのくらいになると被るんですかね。青森にはまだ帽子専門店を見かけるんですが、これから外では帽子の男女をチェックしてみます。”

 さすがに、今和次郎・純三兄弟を生んだ考現学発祥の地ではある。今後Yさんの帽子観察に期待しよう。
 バスはどんどんお客さんが乗って来て、どんどん混んで、まるで山の手線状況となる。

“すごい人気路線だね。昔なら『ドル箱』路線とか云うんだよな。”
Y “ドル箱ってどんな意味ですか?若い世代にはわかりません。今は断然ユーロですよ。それにしてもギューギュー詰めですね。”

※ドル箱
 金銭を入れる箱のことである。また、転じて多くの利益をもたらす人や商品という意味としても使われている。同様の意味としては金箱、米櫃などが日本語では当てることが出来る。同様にドル箱スターに対しては千両役者がある。

 御高齢の方々が乗って来たので、自分とYさんは立ってつり革にぶら下がった。(以降浅虫駅までバスは、国道4号から県病へ左折。メモをとれず記憶でレポート)

Y “わぁー、いっぱい並んでる。本日は「宝くじ吉日」とありました。ここの屋根というか看板は3億円が出る度に高くなるそうですよ。”
“うちの病院は、道路特定財源を充ててもらって、駐車場が四階建てになるんだよ。”
Y “駐車場なくて、めちゃくちゃ道路混雑してましたから、助かると思います。”

 バスは“保健所前”のアナウンス。そして、ここでテープのアナウンスの声が代わった。
 んー!?なぜだろう!?
 ところで、ますます混んで我々はついに最後方でつり革でなく、金棒につかまる状態に。
 「青森商業」・・・「北野内」「中野内」「東野内」・・・「浦島」

Y “ありゃ、海辺なのに山奥ってカンジですね。”

 「観音寺通り」
 沢山降りた。つり革確保。なんとなくひと息つく。
 「久栗坂」「敬仁会前」
 海が正面に見える。ふと、
 「海が見えた。海が見える。五年振りにみる尾道の海は懐かしい・・・」
 林芙美子の『放浪記』の一節が浮かんで来た。久しぶりに見る浅虫の海は懐かしい。
 しかし、鏡のように穏やかな海を見るにつけ、むしろ4月の大変悲しい事故を思い出し、とても辛い。心の中で合掌。
 バスは、国道を激走し、トンネルへ。トンネルの先に浅虫と云えば「湯の島」が見える。

Y “私たち、もうすぐマグロですよね。”(次回参照のこと)
“M君はもう着いてるかな?”

 「駅通り」で元ギャルズがどーんと大勢降りた。何かイベントでもあるのだろうか。
 「浅虫駅」

Y “あ、Mさんもう来てますよ。ここは、足湯なんかもあって、とってもいいんですよ。”

 本来ならば、3人で長バスの旅を慰労し、ひと休みという所だけれど、しかし、我々は残虐非道にも、お魚を見る前にお魚を食べるのだ。
三村 申吾

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