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VOL.89 [2008.7.29]
私を浅虫水族館に連れてって7
 昔(25年ほど前だから、これは昔と云って良いだろう)、愚妻と「いたずラッコ見つけた」のキャッチフレーズとポスターに釣られて、三重県の鳥羽水族館に見に出かけた事がある。
 いやー、実に可愛かった。お腹を上に浮いてぷよぷよしながら、寝ながら貝類を食べていた。小泉流で云うなら、本当に“感動した”ことを覚えている。
 その後、ラッコの居る水族館は増えたわけだが、我が浅虫水族館にとっても、ラッコはお宝である。
 特に一昨年、館のみんなが大変に苦労して人工飼育し、付きっきりで育てた「モモタロウ」が、我が水族館にはいる。
 危険な時期もあったモモタロウのお見舞いに何度か行ったことがある。
 モモタロウは、付きっきりの人工飼育の結果、自分は人間の仲間だと思っているので、人間の赤ちゃんの抱き癖と同様にとにかく人を見ると、“だっこだっこだっこ”と追って泣く。
 飼育アマチュアの自分は、だっこはもちろんしなかったけれど、握手はしたことがある。
 これが、なんともくにゃくにゃとして柔らかい手で、その触感がすこぶる気持ち良かった事を覚えている。

A “ラッコは外の毛の中に非常に細かい毛があって、そこに空気が入って浮いてるんですよ。しかも、体に脂肪を持っていないので、食べ続けないといけません。で、顔を洗ってるように見えるのは、空気を入れる作業でもあり、汚れを落とす作業でもあるんですね。”
“んー、なるほど。ぷかぷか浮いてるようで、なかなかにラッコ業も大変なんだな。”
Y “でも、かわいらしければ、全て良し。こんなにもかわいくって、水族館ではピカ1のかわいらしさですよね。”

 我々三人は、しばし水面にたゆたうラッコに見とれた。見れば見るほど愛嬌がいっぱい。なんという面白い生き物なんだろう。
 A部さんに、こっちも楽しいですよとうながされて我々は小さな水槽の前に立った。

Y “知ってますか?このドクターフィッシュ。東京とかだと1000円とか払って、手を入れて噛み噛みしてもらうんですよ。”
“何、ピラニアのちっちゃいものか。何を食べるんだい。怖いな。”
A “いえ、ドクターっていうだけあって、大丈夫ですよ。角質を食べてもらえるんですよ。古い皮膚を食べてもらうことは、ツルツルになるってことですよ。ちらっと手を入れてみますか?”

 おそるおそる水槽に手を入れてみた。
 よ、寄って来た。つんつんと刺激くすぐったい、くすぐったい。

Y “あの、このドクターは、顔も入れたら、ツルツル美肌にしてくれるんですか。”
A “まだ、やってみた人は聞いてませんね。”
M “Yさん、年齢って顔よりも、手に出るって云うから、手がツルピカの方がいいんじゃない!”
Y “あ、ははは、は。私、八戸にいた時、南部の「もちょかしい」って方言覚えたんですけど、これ、その感じです。あ、ははは。”
“Y子さん、それ10年ぶりに聞いた。この頃、「もちょかしい」なんて云わないなぁ。しかし、うまい。座布団3枚!”

 A部さんのご好意で、我々はドクターツルツルを堪能し、エスカレーターで2階へと上がった。なんと、海がきれいに見える。

A “ここが、有名な夕陽デートコーナーです。夏は夜6時まで営業してるんで、それなりにカップルが来てくれるんですよ。海と夕陽が二人をロマンスへ誘う。”

 力説するA部さんに、我がトリオはそれぞれの思いで頷きながら、最終コーナーへと降りて行った。
 小ぶりのイルカプールがあって、この水族館のスターだった30歳のマリンが、いわば余生を送っている所だ。
 A部さんが、“マリンは、よくがんばったんだよな。”と声をかけたら
 “キキキッキ”とA部さんに返事をしながら寄ってきた。まるで「♪交わす目と目が震えてる〜(『麦畑』)」のようだ。二人は恋人同士のように見つめ合っている。とてもいい光景だった。
 今日は浅虫水族館で、いろんな芸というか技も見たけれど、最後に見たA部さんとマリンの心の交流が一等賞だった。
 水族館だから、主役はなるほど魚たちというわけだけれど、A部さんを筆頭に、水族館の生き物たちとの仕事が好きで好きでたまらない人たちが居てくれて、水族館は輝いているのだと思った。
 ありがとう浅虫水族館の仲間たち。
 いよいよ夏休み。イベント多彩です。
三村 申吾

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