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VOL.103 [2009.5.13]
Art is long |
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いっちゃんの夢を見た──
”最近、ちっとも来てくれやしまへんな“
“先生、そんな、立命館にお邪魔しました”
としどろもどろになりながら目が覚めた。
ああ、もう一年になるんだなあと、改めてしみじみ思った。
“いっちゃん”こと随筆家の岡部伊都子さんが亡くなられたのは昨年の4月29日。現在、京都の立命館大学国際平和ミュージアムで回顧展が行われている。5月31日までだから、古都めぐりで金閣寺方面に行ったならば訪ねてほしい。
自分としては一周忌代わりに立命館にあがらせていただき、しんみりとして来たのだけれど、いっちゃんが夢で云いたい事は、30年もお付き合いしてきたのだから、よくわかる。
それは、いっちゃんは、お骨が納められた京都の東山廟ではなく、沖縄の摩文仁の丘の平和の礎(いしじ)の邦夫さん(婚約者)のところにいますよという事だ。
いっちゃんはよく、今年一年の命と語られては自分たちを困らせ、沖縄の邦夫さんのところへゆくんですとお話をされていた、
そんな訳だから、一周忌の4月には平和の礎や竹富島のこぼし文庫(いっちゃんが土地の子どもたちのために作った小さな図書館)に行きたいと思っていたが、計画倒れになっている。いろいろ急な事が起って、予定をキャンセルしなければならなかった。
そうは云っても、我々が本当に物書きに出会う場は、やっぱり作品においてであろう。
800年経とうと清少納言は『枕草子』の中で活き活きと自慢話をしているし、『坊ちゃん』が赤シャツを懲らしめるとスカッとした気分になるし、太宰はN君たちと酒呑んで楽しく『津軽』を歩いている。
正に、”Life is short, but art is long“だ。
さて岡部さんの数ある作品の中で、自分が好きなのは『芸術新潮』に連載していたシリーズだ。今宵はその中から『御伽草子を歩く』を読んで、いっちゃんに会おうと思う。 |
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三村 申吾
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