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命ふたつの中に活たる桜かな
これは芭蕉が「野ざらし紀行」の旅の途中で、二十年ぶりに服部土芳に会った折の句である。
長い長い時を互いに経ての出会いである。 「命ふたつ」の初句に込められた、二人の想いには無量のものがある。その二人の間に、桜が今を盛りと咲いている。
短い一句に、これだけの情感をさらりと表現できる日本人の感情はすごいと思う。政治に身を置く者として、もっと言葉を大切にしたいとも改めて思った。
ともあれ、今年の桜は殊の外に美しかった。
春になってからの寒さゆえか、開花こそ遅かったが、その分本当に深い色合いが、きりりと清しかった。
そんな桜の下で、自分も二十余年ぶりに高校時代の友人に会った。
生きてゐることがうれしい水をくむ 山頭火
の「水」が「酒」にかわって、しばし痛飲歓談した。
二十余年の時間が瞬く間に散りゆく花びらのもとで霧散し、充ちたりた思いの時を過ごした。
「元気でいようや。生きていればまた会えるさ! good luck , good-by」などと高校時代のように手を振って別れた。
折々の桜に、折々の想い出を重ねて、今年の春も行こうとしている。
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