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VOL.185 [2014.5.2]
山口瞳先生と空豆
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本日も、県産野菜日々これ新たなりを発見せんと、勇んでスーパーへ出かけた。
野菜コーナーで、空豆が目に飛び込んで来た。さすがに今は、まだ鹿児島産だった。
突然に、若かリし頃の、初夏の東京のノスタルジックな思い出が湧き上がって来て、今夜の食前のビールのあてに、何としても食べたくなった。
さて、中山競馬場(千葉県船橋市)の皐月賞(4月中旬)が終わると、競馬の舞台は、青葉輝く府中こと東京競馬場(東京都府中市)へと移る。5月末、3歳馬が生涯一度だけ出走出来るオークス、ダービーへと、競馬のカレンダーは一気に佳境へ向かって行く。
5月の東京は、爽やかな一番いい季節だ。
競馬も最高に面白い時期で、そんな頃新米編集者として、作家の山口瞳先生の鞄持ちで、府中競馬へ度々お供したものだ。
勝負は時の運。当たったり外れたり(実際は殆ど外して)1レースから最終12レースまで、何故自分はA馬B馬を選んだかの怪しい根拠を論説したり、競馬場のお昼はあんパンと牛乳、おやつはゆで卵と決まってるんだよと教えを頂いたり、ゴール前「赤(3枠)そのままー!青(4枠)来るなー!」(次回の「注釈」を参照下さい)の絶叫をハモったりして、とにかく滅茶苦茶楽しく一日を過ごしたものだ。
レースが全て終わり、払い戻したり(まれだが)しているうちに、スタンドから遥かに見える富士山も黄昏れてくれば後は、反省会に府中の街に繰り出すしかないでしょう!
と云う事で向かうは、先生行きつけの小料理の店だった。
空気も乾いていて、こちらも叫び続けていたから、のどの渇きも絶好調で、当たっても外れても、キリッと冷えたビールがたまらなかった。
その時、必ず出て来たのが旬の空豆だった。
塩あんばいが抜群に良くて、ビールの苦味と絶妙に決まっていた。
あの日々の旬の空豆が、無性に懐かしくて、食べたくなったと云う訳だ。
我ながら今夕は、堅からず柔らかからず、とても上手に茹で上がり、パラパラ振った、にがりの効いた天塩が空豆の旨味をぐっと引き出して、良かった良かった、本当においしかった。
先生と最後に府中で空豆を食べてから、もう何だかんだと時を経ること、30年近くになる。
合掌。 |
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三村 申吾
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