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VOL.200 [2014.9.19]
里の秋
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♪夕空晴れて秋風ふき〜
♪秋の夕日に照る山紅葉〜
テレビをつけたら、音楽の時間に小学校でよく合唱した懐かしい歌声が続けて流れて来た。
朝晩の涼しさだけでなく、空の色合いも、引っ張ったように薄く広がる雲の具合も、いよいよ秋めいて来た感じだ。
この、夏から秋への季節の変わり目をとても上手に捉えた情感としてよく引用される、藤原敏行の歌にあるように
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」
そんな気分の頃になった。
同時に、ある秋の歌を思い出した。大学同期で、後に芸大に入り直してプロの箏の演奏家になったKさんが、よく父上の思い出として話したり、演奏会の終いに弾いていた曲だ。
♪静かな静かな 里の秋〜
Kさんからこの歌にまつわる父上の思い出話を伺ってから、この曲が流れる度に、自分も平和の大切さ愛おしさを共に思うようになった。
この歌は、南の島の戦場にいる父を思って創られたのだと三番に至って気が付く。
一番は、静かな里の秋にかあさんとただ二人、栗の実をいろり端で煮ている光景を歌い、
二番は、明るい星の夜に栗の実食べながらかつて共に夜を送った、父さんの笑顔を思い出す
そして三番で、
♪さよならさよなら 椰子の島〜
と一気に転換があり
この歌の本当の思いと願い、つまり南の島の戦場にいる父さんが、無事に帰ることを
♪ああ とうさんよ ご無事でと 今夜もかあさんと 祈ります
と歌い込む。
Kさんの父上も南の島に出征していて、無事をひたすら祈った母上から聞いた当時の話が、里の秋の歌と共にKさんの胸に刻まれたのだという。
日本と云う国の普通に生きる人たちが、声高にではなく、こうして静かに戦争の悲しみを歌い続けて来たことに感服する。
Kさんの澄んだ琴の音に合わせた歌声が、聞きたい秋になった。
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三村 申吾
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