linkプロフィール心象スケッチフォトダイアリー政策三村申吾の姿勢ホーム
VOL.228 [2015.4.30]
カシラー、ナカ
桜の春になって、各地で消防団の観閲式が始まった。
申し訳ないが、日曜日毎に各地で行われるので日程が重なる事となり、副知事たちと地域を交代し、隔年或いは三年に一回観閲に上がる事となる。
纏振りや梯子登りなどもあって、なかなかに勇壮果敢なものである。
見物と言ったら団員各位に失礼だが、やはりギャラリーが沢山いて拍手がいっぱいの方が絶対にいい。
是非とも、お花見気分でも構わないから、多くの方々に、地域のために奉仕し頑張ってくれている消防団活動理解のためにも、観閲式をご覧頂けたら本当にありがたい。

この観閲式でゲストの自分の役割と言えば、表彰状伝達と祝辞である。
その際は必ず壇上に上がり、
指揮者の「カシラー、ナカ」の号令とラッパ隊の演奏に合わせて自分も敬礼をする事になる。
百石町長時代も含め、かれこれ16年も観閲式あるいは防災訓練や消防学校入校式等で“カシラーナカ”をやっているから、それなりにサマになってはいるけれど、百石町長35才で臨んだ初の観閲式の“カシラー、ナカ”では、ギャラリーから
「めんこーい!」
の嬌声が乱れ飛んで、ガマンできずに消防団員たちからも笑いが漏れて、我ながら本当に恥ずかしく情けなかった事を今、思い出している。

自分の町長としての育て親でもあり、地域を代表する高名なS団長に大変に申し分なく思った。
だって、S団長は、観閲式の前、やっと間に合った町長用の少しだぶつく消防服に身を包んだ自分を相手に、1時間以上、2百回以上は敬礼の型と歩き方と所作を叩き込んでくれたのだから(*_*)……。
長い一日の式典も懇親会も終わってから、
「S団長すみません」
と率直にお詫びして、頭を下げに行った。

しかして団長、懇親会のお酒もあったのか、滅茶苦茶に上機嫌で心からの笑顔で
「いや、ちゃんとした敬礼で動ぎもいがった。ワも、ホントだば、たまげだめごいど思った。町のおかちゃんだぢぁ、正直な気持ぢで声かげだのだがら、たいしたいいごどだ。申吾ちゃんばみなで、うげいれだってごどだがら、いがったいがった」
と言ってくれた。
うれしかった。心からうれしかった。

その春から幾星霜。S団長は、今は亡く、自分も“カシラー、ナカ”16年のキャリアとなった。
でも、毎年毎年、春の最初の消防観閲式では、S団長の敬礼訓練とお母さんたちの
“めんこーい”の 声、そしてS団長の にっこりの笑顔を思い出す。

三村 申吾

Copyright(C) 2006 Shingo Mimura. All Rights Reserved.